第9回学習データで探る生徒の実態“もっと先に、もっと深く進むことができる” 中学生 理科編
はじめに
第2回の記事では、中学数学においてもっと先に、もっと深く学習できる生徒の実態について調査し、約9人に1人の生徒が自身の学年より上の学年で学習する内容を習得していることを明らかにした。
読者の方から、同様に他の教科についても上の学年で習う内容を学習している生徒について関心があるというお声を頂き、今回は理科を取り上げる。
学校ごとに進度や習う単元の順序が異なる中で、一人ひとりにあった指導に悩まれる指導者も多いのではないだろうか。
理科の先取りの実態
従来の模試や学力調査は決まった範囲内から出題するため、出題範囲以外の内容について理解度を明らかにすることが難しかった。一方、理解度に応じて先取り学習や苦手分野の復習まで行うことができるEdTechを活用して学習していれば、幅広い範囲の理解度を、EdTechのデータをもとに把握することができる。
今回は第2回を念頭に、「(高校理科も含めて)自分より上の学年の理科の単元を一つでも合格している」中学1,2年生の割合を調査した。
また、「高校理科の単元を一つでも合格している」中学3年生の割合と先取りしている教科の内訳を調査した。
なお、本稿で記載している高校理科は、atama+上で学習可能な「高校物理」「高校化学」「高校生物」の3教科が含まれる。
8人に1人の中学1,2年生が上の学年の内容を習得している
今回の調査では自身の学年よりも上の学年の単元を学習し、かつ理解しているとAIに判断された生徒の割合を調査した。
その結果、中学1,2年生の約8人に1人は上の学年の内容を習得していることが明らかになった。なお、第2回で示した中学数学において、上の学年の内容を理解しているのは約9人に1人であった。
また、中学3年生の約23人に1人は高校理科の内容を習得していることも明らかになった。
一般に受験を控える学年でありながら、クラスに1名程度は高校範囲の理科の学習に進み、習得していることになる。
なお、先取りしている教科の内訳は化学が最も多く46.2%を占めており、物理が31.4%、生物が22.4%と続く。
もっと先に進める生徒の可能性を引き出す
第2回に引き続き、自身よりも上の学年の内容を理解できる学力を持った生徒が一定数存在することが分かった。
学年に関わらず、生徒一人ひとりが自身の興味や関心、理解度に合わせた内容を学習できることが重要だと考える。
本稿がEdTechも含めて、より良い指導の一助になれば幸いである。
調査概要
調査対象:2021年度atama+を利用した中学1・2年生、3年生のユーザーからそれぞれランダムに抽出した3,000名
調査手法:「(高校理科を含めて)自分より上の学年の単元を一つでも合格している」中学1,2年生の割合を調査
また、高校理科の単元を一つでも合格している中学3年生の割合と教科の内訳を調査(複数教科先取りしている生徒は重複して集計している)
執筆者
atama+ EdTech研究所 上席研究員 森本 典生、 データサイエンティスト 内藤 純、主任研究員 池田 真一郎
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