第10回 高校生が抱える”つまずき” 理科編
はじめに
以前の記事では、数学におけるつまずきについて調査し、高校1年生の3人に2人が中学以前の範囲につまずきを抱えていることを明らかにした。
読者の方々から、同様に他の教科についても中学以前の範囲のつまずきについて関心があるというお声を頂き、今回は理科を取り上げる。
高校理科を学習する上では、中学範囲の理科および、数学が身についていることが重要だ。
例えば物理で力学を学習する際は、中学範囲の『力の合成と分解』の理解はもちろんのこと、計算過程では中学数学の『連立方程式』が必要になる。
高校理科の指導において、過去の範囲を復習する必要性を感じながらも、高校範囲のカリキュラムを進めざるを得ないというもどかしさを感じたことがある指導者も多いのではないだろうか。
高校理科のつまずきに関する実態
atama+ではAIが生徒の理解度を診断し、設定した目標に対して、弱点となっている土台の単元にさかのぼって生徒一人ひとりに最適なカリキュラムを提案する。
今回は、高校範囲を学習しているが、中学範囲の講義を視聴した生徒を「つまずきを抱えた生徒」と定義し、高校1〜3年生を対象に中学以前の数学と理科それぞれについてつまずきを抱えた生徒の割合を調査した。
2人に1人が中学数学、3人に1人が中学理科につまずきを抱えている
調査の結果、高校理科を学習している高校1~3年生において、2人に1人が中学数学、3人に1人が中学理科につまずきを抱えていることが明らかになった。
前者については、高校理科を学習する際には複雑な計算を正確に行うことが求められるようになるため、数学につまずきを抱えた生徒が復習している実態がうかがえた。
後者については高校範囲の理解の前提となる中学範囲を復習している生徒が一定数いるようだ。
一人ひとりにあった基礎の復習に向けて
今回の調査によって、以前の数学の調査と同様、中学範囲につまずきを抱えた生徒が一定数いることが明らかになった。
特に、高校理科から中学数学へと、教科をまたいで基礎に立ち返って学習している生徒が約2人に1人いることは注目に値するだろう。
より高度な内容を学習する上で復習は大切であるが、限られた時間で一人ひとりの理解度に合わせて効率的に学習をすることが求められる。
本稿がEdTechも含めた指導を検討する上での参考になれば幸いである。
調査概要
対象期間:2022/4/1~9/30
調査対象:atama+高校理科(物理・化学・生物)を学習した高校1年生~3年生のユーザー3,000名をランダムに抽出
調査手法:中学範囲の数学、理科の講義動画を視聴した生徒の割合を調査
執筆者
atama+ EdTech研究所 上席研究員 森本 典生、データサイエンティスト 内藤 純、主任研究員 池田 真一郎
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