第7回 講義動画視聴の実態 高校数学編
はじめに
前回の記事では、英単語について定着にかかる時間とそのばらつきについて調査した。
読者の方々から、学習の入り口となる講義について「一人ひとり理解度が違う中でどれくらいの進度で講義するか悩ましい」「生徒も分からないところを何度も聞くのはためらいがあるのではないか」というお声をいただいた。
日々分かりやすく教えることを大切にしながらも、一人ひとりの理解に合わせて講義をしていくことに難しさを感じる指導者も多いのではないだろうか。
そこでより良い指導を考えるために、atama+が持つ講義動画に関するデータを用い、動画が生徒の学びにどのように活用されているのかを明らかにする。
講義動画の視聴に関する実態
atama+では一人ひとりの理解度に合わせてAIが講義や演習を提案する。具体的には理解度が高いと判断された単元では演習が提案され、一層の理解が必要と判断された単元ではまず講義が提案される。生徒はAIの提案を参考にしながら自身にあった教材を選択し学習する。
そのため、講義を視聴せずにある単元を合格する生徒もいれば、講義を視聴してから演習に進む生徒もいる。中には複数回講義を視聴して合格する生徒もいる。
この仕組みを生かし、高校数学において1単元あたり何回講義動画が再生されているかについて調査した。なお、講義動画は1単元あたり、数分程度であり再生速度も調整可能である。
高校数学の学習において、44%の単元では講義動画は視聴されず、20%は複数回視聴
調査の結果、高校数学の学習において、44%の単元では講義動画を視聴されておらず、20%の単元では講義動画を複数回視聴されていることが分かった。
前者については、学校や塾の授業などで既に習った範囲をatama+で学習をする際に、改めて講義を視聴する必要がなかったのではないかと推察される。
また、後者の講義動画の再生が複数回となった20%の場合では、AIの提案に基づき、自身の理解度に応じて必要なだけ復習している実態がうかがえる。
同じ生徒でも単元によって講義の視聴回数は差がある
上記のデータから生まれた考察を、一人の生徒の学習シーンにあてはめて考えてみたい。単元Aは、講義を見ずに合格しており、習った内容を覚えている範囲であると思われる。
一方で、単元Bは講義を見てから演習に取り組んでいる。その後、演習を通じて、自分の分からないところを再度講義で確認しながら合格しているようだ。
単元Cは、演習から取り組んでいるが、その後、講義を1回視聴している。演習で分からないところが出てきて、その箇所を講義で確認したと思われる。
いかに一人ひとりにあったピンポイントの学習を支援するか
先に記載した一人の生徒の学習シーンのように、同じ生徒であっても学習する単元の理解度によって、必要な講義を見る回数やタイミングは異なる。
そのため、既に理解している単元の講義にはできるだけ時間をかけず、苦手としている単元の講義は自分のペースで学習したほうが効率的な学習につながるはずである。
限られた時間で効率的に学習するためには、EdTechの活用も含めて一人ひとりの理解度に合わせてピンポイント学習できることが望ましいだろう。
本稿が指導を検討する上での参考になれば幸いである。
調査概要
対象期間:2021年4月1日 ~ 2022年3月31日
調査対象:atama+高校数学を学習した高校1年生~3年生のユーザー約25,000名をランダムに抽出.
調査手法:生徒×単元ごとの講義視聴回数を調査し,その割合を分析.
執筆者
atama+ EdTech研究所
主席研究員:森本 典生 , データサイエンティスト:内藤 純 , 研究員:池田 真一郎
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