第2回学習データで探る生徒の実態 ”もっと先に、もっと深く進むことができる” 中学生 数学編

前回のテーマ「中学生が抱える“つまずき” 数学編」への反響

前回は、中学生の4人に3人が前学年以前の数学の単元につまずきを抱えていること、学年が上がるにつれてその割合が大きくなっていくことを学習データを基に示した。

読者の方々から「共感した」「数値で聞くことでより実感できた」といった感想をいただいた。一方で、「もっと先の内容や、もっと深い内容に進むことができる生徒への指導について悩んでいる」というお声もいただいた。つまずきを抱えた生徒への寄り添いも課題としてある中で、もっと先に、あるいはもっと深く進むことができる生徒への指導に、力をいれたくても入れられていない指導者も多いのではないだろうか。


もっと先に、もっと深く進むことができる生徒が抱える悩み

国内の教育システムに目を向けると、スポーツや芸術などの分野では、特異な才能を伸ばすシステムが作られてきた。しかし、教科学習においてはクラスの全員が一律のカリキュラムに沿って学習を進める「履修主義」という考え方が広く取り入れられてきた。そのため、先に進むことができる生徒も周りのペースに合わせないといけない、という悩みを抱えている。

「周りの生徒に合わせるために、分かっていても分からないふりをしたことがある」

「既に知っていることばかりの繰り返しで、充実感を得ることができない」

「かといって授業中に他のことをやっていると注意される」

悩んでいるのは指導者側も同じだ。このような生徒達に合わせた授業を行えば、大多数の生徒を置き去りにしてしまう。また、授業の準備も膨大になってしまい現実的ではない。

この問題と向き合うために、このような生徒がどれほど存在するのか把握することから始めたい。

従来の模試や学力調査は決まった範囲内の学力を調査するため、出題範囲より先の内容の理解度を明らかにすることが難しかった。一方、理解度にあわせた学習ができる仕様のEdTechのデータを活用すれば生徒一人ひとりがどこまで理解しているかを把握することができる。

一律に定められたカリキュラムよりも先の内容を理解している生徒はどれくらいいるのだろうか。

atama+の学習データを用いて調査を行った。


調査概要

対象期間:2021年4月1日 〜 2021年12月31日

対象人数:期間内にatama+で数学を学習した小学1年生~中学3年生約50,000人を抽出。

調査手法:「自分より上の学年の単元を一つでも合格している」生徒をもっと先に進める生徒として定義。


小学生では約5人に1人が、中学生では約9人に1人が上の学年の内容を理解している

カリキュラムは塾や学校によって異なるため、今回の調査では自身の学年よりも上の学年の単元を学習し、かつ理解しているとAIに判断された生徒の割合を調査した。

結果、上の学年の単元を理解している生徒の割合は、小学生では 18.6%(約5人に1人)、中学生では 11.2%(約9人に1人)だった。この数字には反映されていない生徒、つまり能力的には上の学年の単元に進むことができるが、塾や学校のカリキュラムにあわせて学習しているので進んでいないだけ、という生徒もいるはずだ。


高校の内容を学習し、理解している中学3年生は12人に1人

中学3年生は、高校入試を控えている学年だ。そのため、一般的には先取りをするのではなく受験に向けた勉強に集中する。その中でも、8.5%の中学3年生が高校範囲の学習に取り組み、理解していることは注目に値する。


先に進める生徒の可能性を、いかに引き出すか

今回の調査の結果、自身よりも上の学年の内容を理解できる学力を持った生徒が一定数存在することが分かった。

世界に目を向けると、年齢によって学びの制限を設けない国もある。国内においても、子どもたちがより良い人生を送るために、学年や年齢に関わらず、一人ひとりにあった学びを提供していくことが重要だと考える。その一手段としてEdTechを上手く活用できるとよいのではないだろうか。


第2回学習データレポート(PDF)
2022年2月18日