第3回習得にかかる時間には5倍の開き! “習得時間のばらつき” 英語編
過去の記事への反響
直近2回の記事では、数学と算数において “つまずきを抱えている生徒”、“先に進むことができる生徒”
の両方の存在を学習データを基に示した。
読者の方々から、「生徒の理解度が異なる中で、決められたカリキュラムを一律に進めなければならな いことに悩んでいる」といった感想を頂いた。
多くの生徒により良い授業を届けていきたいと日々奮闘する中で、同様の悩みを抱える指導者も多い のではないだろうか。
生徒一人ひとり異なる、習得にかかる時間
今回は、ある単元を習得するまでに必要な学習時間に注目して、atama+学習データを用いた調査を行う。
atama+では一人ひとりの理解度をAIが診断し、習得していると判断すると合格となる。単元合格までに解く問題数やかかる時間は生徒一人ひとり異なる。
この特徴を用いて、今回の調査では、生徒によってどのくらい習得にかかる時間に違いがあるのかを調べるために、中学英語・高校英語それぞれ学習人数が多い上位30単元(合計60単元)を対象に習得までの学習時間を抽出し、下記3つの生徒に分類して分析した。
①習得が速い生徒(習得にかかる時間が速い順番から数えて全体の20%に位置する生徒)
②真ん中の生徒(同50%に位置する生徒)
③習得がゆっくりな生徒(同80%に位置する生徒)
速い生徒とゆっくりな生徒で習得にかかる時間には5倍の開き
調査の結果、習得が速い生徒とゆっくりな生徒で習得にかかる時間には約5倍の開きがあることが分かった。
また、習得にかかる時間は真ん中の生徒に対して速い生徒は0.4倍、ゆっくりな生徒は2.3倍ということも分かった。
例えば、10人生徒がいるとする。
真ん中の生徒が60分かかる内容を、
最初の2人は27分以下で終わり、
最後の2人は141分以上かかることになる。
今回は、習得が速い順に20%、50%、80%に位置する生徒を代表値とした。
実際の習得にかかる時間の差は5倍よりも大きいと考えられる。
本結果から、単元を身につけるために必要な学習量は生徒によって大きく異なることが明らかになった。
全員が必要なだけ学習できるために
「ある単元を身につけるために必要な学習量は生徒によって大きく異なる」ならば、それぞれの生徒が、各自の必要な学習量を取り組めることが重要だ。
また、学習の目的、身につけたい水準は人それぞれだ。習得が速い生徒でも、難易度の高い内容を習得しようと思えば学習時間が必要になる。
生徒一人ひとりが自分の学力を目標に届かせるために、何をどれだけ学習するべきなのか。適切な内容、適切な必要回数を示してくれるEdTechの強みが発揮されやすい領域だ。
一方で、人の力も欠かせない。
学習に取り組もうと思えるための動機付け、正しい学習方法で取り組むための指導の両方が非常に重要だ。
このレポートが指導の一助となれば幸いである。
調査概要
対象期間:2021年4月1日 〜 2022年1月31日
調査対象:中学英語・高校英語の学習人数が多い上位30単元ずつ(合計60単元)を対象とした。
(いずれの単元も8,000人以上の生徒が学習している)
調査手法:初回合格までの時間を「習得にかかる時間」として定義。まず、10,000秒を超える
データを外れ値として除外。その上で、単元ごとに合格にかかる時間が速い順から
数えて20%の生徒と、50%の生徒、80%の生徒のかかる時間を抽出。
第3回学習データレポート(PDF)
- 第30回 教育最前線 – 国内の塾における EdTech の価値事例「生徒インタビュー」編「中学内容を先取りする小学生」
- 第29回教育最前線 – 国内の塾におけるEdTech の価値事例「次世代型個別指導 おがわ塾」編「教員歴36 年の豊富な経験から各生徒にとって心地いい学習を提供し自学力を育む」
- 第28回教育最前線 – 国内の塾におけるEdTech の価値事例「進学塾 MUGEN」編「無限の可能性を引き出し、夢を実現する」
- 第27回教育最前線 – 国内の塾におけるEdTech の価値事例「俊英館Dreaven」編
- 第26回教育最前線 – 国内の塾における EdTech の価値事例「生徒インタビュー」編「高校内容を先取りする中学生3」
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